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センサーで自動点灯・消灯。LEDの一歩先を行く省エネ

月刊省エネルギー 2019年1月号寄稿

センサー付きLEDの魅力

アイキュージャパン株式会社は、マレーシアに本社を置く赤外線センサーメーカー「IQ Group Holdings」の日本法人で、日本国内におけるマーケティングと販売を担当している。IQ Group は創業以来、赤外線センサーおよび一般家庭向けのセンサーライトの他、工場・倉庫向けの高天井用センサーライトを開発・製造してきた。

国内の高天井用照明の市場は、2020年の水銀灯の輸入・生産禁止を控え、LED化が進んでいる。従来光源の水銀灯と比較すると、明るさは現状以上で消費電力を約1/4程度に削減できるのがその理由。省エネを追求する工場や、賃貸向け倉庫を中心に普及している。

そのマーケットに対し、アイキュージャパンは人感センサー付きLED(以下Lumiqs)を2015年夏より提供している。工場や倉庫で照明と人の動きを観察すると、一つの照明の下で、人が動かずに作業している時間が多くないことに気付く。特に倉庫や資材置き場は顕著で、荷物をピックアップして、入出荷を行う作業が主であることから、一つの照明の下での滞在率はかなり低い。ここに目を付けた製品がLumiqsで、照明一つ一つに人感センサーを搭載し、人やフォークリフトの移動に合わせて最適に点灯する(図1)。検知エリアは、センサーから地面に向かって円錐状に形成される。設置高に対して直径で2倍のエリアをとる(注1)。例えば、天井高6mに設置した場合、地面で直径12mの検知エリアとなる。照明の下を通ると、進行方向の次の照明が点灯するイメージである。待機時の設定はリモコンでできる。待機時明るさは、消灯もしくは20%のほんのり点灯が選べ、待機状態に入るタイマーは、30秒、1分、3分、5分が選べる。利用例としては、待機時ほんのり点灯、人やフォークリフトが来たら100%点灯、最短の30秒でほんのり点灯に戻る、という設定が多い。工場や倉庫の高天井照明として普及している水銀灯と蛍光灯に対して、それぞれ対応する機種がある。

(注1)検知エリアは、水銀灯代替タイプは設置高の2倍、蛍光灯代替タイプは1倍。

図1 自動点灯・消灯

 

 

図2 Lumiqsのラインナップ

BL-640

HBシリーズ

MBシリーズ

人感センサーの仕組みとセンサーの位置

 

施設の稼働時間に対して、センサー検知してLEDが点灯する時間割合を「点灯率」と呼んでいる。実績として倉庫や資材置き場の点灯率は20%から30%が多い。残りの70%から80%の時間は、省エネできる可能性が高いことを意味する。点灯率は、Lumiqs設置後の消費電力量から計算することができる他、事前にセンサーとタイマーが一体になった専用計測器「モニタリングセンサー」で測ることができる(図3)。測定した点灯率をLumiqs製品の定格消費電力に乗ずると、センサー付きLEDを導入した場合の効果が計算できる。後述の導入事例のように、点灯率事前計測サービスはLumiqs製品導入の決め手になっており、Lumiqs製品の魅力を高めている。

図3 モニタリングセンサーの概要   詳しくはこちら

簡易に設置できるモニタリングセンサー

Lumiqsの特長は、センサー検知の距離(最大12m)である。搭載している人感センサーは、検知範囲内の物体が発する遠赤外線の量と動きを検知する。具体的には、人やフォークリフトなどの検知対象と、床などの周辺物体が発する遠赤外線量(熱)の差、そして動きを捉える。熱源があってもそれが動かなければ検知しない。

Lumiqsは、検知対象が発する遠赤外線を効果的に捕えるため、大型の集光レンズを開発し搭載している。これにより、周辺のノイズを拾って信号化する「誤検知」を回避し、最大12mの検知距離を確保している(図4)。12mの高さから、人体の肩から上が発する僅かな遠赤外線を捕らえて、正確に検知信号化できることが技術的特長である。

図4 大型の集光レンズが特徴

Lumiqsは、センサー内蔵で一つ一つの照明が自動点灯・消灯する。一方、人感センサーを出入り口に設置して、LED照明と結線する事例もある。既存の照明を活かして、センサーによる省エネが期待できることがメリットだ。しかしながら、出入り口でセンサー検知すると、結線した全ての照明が点灯するため、個々にセンサーがついている照明と比較すると、消費電力が大きくなる。また、出入り口に設置されたセンサーが検知しないと、結線した照明が消えてしまう(待機状態に入ってしまう)ため、必然的に待機までのタイマーが長くなり、省エネ効果が得にくい。設置を検討する部屋の面積や用途、点灯率や初期費用を考慮して、センサー内蔵かセンサー別置きかを選択すると良い。センサーの数が多ければ多いほど、人の動きに合わせた細かいオンオフが可能となる。※詳しくはこちら

 

導入事例(プロロジスパークつくば1-A

 

2018年5月に発売したBL-640(図2)は、物流不動産の所有・運営・開発のリーディングカンパニーのプロロジスと共同開発した、蛍光灯代替のセンサー付きLEDベースライトである。プロロジスは入居カスタマーの省エネに貢献するため、LED化をはじめ、スイッチで段階的に点灯する仕組みを取り入れてきた。さらなる省エネを追求するため、人感センサー付きベースライトの開発をアイキュージャパンに打診し、開発プロジェクトがスタートした。プロロジスの開発する大型物流施設は、倉庫内の有効高さが5.5mを超える。市場の人感センサー付きベースライトは、天井高5m未満が検知範囲で、求める製品が市場になかったことが共同開発のきっかけである。市場の求める仕様の他、ターゲットコストや設置方法に関し、プロロジスより多くの知見得てBL-640は開発された。

試作品を稼働中のプロロジスの施設で検証した結果、センサーによる自動点灯・消灯により、蛍光灯比81%、センサーなしLED比56%の省エネが確認された(図5)。電力ロガーによる消費電力実測の他、前述のモニタリングセンサーを同テスト現場に設置し、点灯率21.4%の結果を得た。この点灯率で算出したのが上述の省エネ率である。

図5 プロロジスパークつくば1-Aにおける省エネ

図6 プロロジスパークつくば1-Aの外観

この検証結果を受けて、2018年9月竣工の大型物流施設「プロロジスパークつくば1-A」(図6)にて、約2600台が導入された。蛍光灯と比較して、年間で1,142,731kWhの省エネ見込みである。導入効果を測定するため、プロロジスが同施設に複数配線の消費電力を測定できる多回路モニターを設置した(図7)。竣工後1カ月の消費電力データを分析した結果、本稼働後の点灯率は23.1%であることが分かった。導入前の検証値(21.4%)と同等の結果となり、狙い通りの省エネが得られている。

図7 プロロジスパークつくば1-Aに設置した電力モニター

同製品は、2018年度のグッドデザイン賞、および省エネ大賞ををプロロジスと共同受賞した。これからもLumiqsは人感センサーと使いやすいデザインで、工場・倉庫照明の省エネに貢献していきたい。